第13章 1B64

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 サチエルが答える。 「実は、そのもう一つの地球へつながる緊急用の脱出通路がこの東京という都市にあるのです。そのバクマツとか言う時代が選ばれたのは、ちょうど時間軸の転換点がその時代に存在したから。そしてその転換点の中心となる時空の歪みが、この一帯に存在しています。わたくしたちが、この日本に送り込まれたのはそのためなのです」  ユミエルが付け足す。 「そして、あちらでの作戦が完了する段階になったら、わたしたちはその時空のトンネルを通って向こう側の、新しい歴史の地球に脱出するという手筈でした」 「なるほどねえ。で、その脱出用の通路の場所は?」と二尉。もう完全に落ち着きを取り戻した様子だ。サチエルが答える。 「首都高速の、ある場所から入れます」  しばし二尉は腕組みをして考え込み、やがて意を決したという口調で俺たちを見まわしながら、妙におごそかな感じで告げた。 「なら、とにかくあちら側の地球とやらに行ってみるしかないわね。ただ、かなり危険を伴う任務になるわよ、今回は。だから強制はできない」 「わたしは行きます!」  真っ先にそう応じたのはラミエルだった。 「早太さんや麻耶ちゃんの存在ごと、この惑星が消えてしまうなんて黙って見ていられません。それにわたしなら、イケスカンダルの科学技術について桂木さんたちよりは詳しいですから」 「わたくしも参りますわ」  次にサチエルが椅子から立ち上がって宣言した。 「わたくしたちの故郷の惑星がやっている事ですから、それを止めに行くというのなら、それが地球に亡命させていただいたわたくしの義務です」
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