第13章 1B64

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 翌日、陸上自衛隊の野戦服に身を包んだ、俺、麻耶、ラミエル、サチエル、ユミエル、そして桂木二尉は大型のバンで首都高速3号線を走っていた。サチエルが指定していた場所は既に警察によって左車線が通行止めにしてあり、俺たちの乗った車はそこだけ出っ張った、地上へ降りる非常階段が設置してあるスペースの横に停まった。サチエルが言うには、その非常階段を下りた所に、あちら側のもう一つの地球、幕末の時代に通じている時空間トンネルが開いているのだという。  車から降りて一人ずつリュックを背負う。桂木二尉は拳銃を腰に下げ、分解式の自動小銃や手投げ弾などの武器を詰め込んだ馬鹿でかいリュックを軽々と背負った。俺たちは民間人で武器は持てないし、それ以前に使えないので、非常食や懐中電灯などを入れた小さなリュックを背負った。  その出っ張ったスペースには、高速道路事務所に連絡するための非常用電話が入った黄色いボックスがあった。非常階段の入り口にはカギがかかったままだったので、俺たちはさして高くない柵を乗り越えて行くことにした。 「あれ?」  不意に麻耶が妙な声を出したので、俺も麻耶の視線の先に目をやった。対向車線を隔てたビルの屋上にエッソ石油の看板があり、給油ホースを手にした虎がにっこり笑っている。 「どうかしたのか?麻耶」 「ううん、なんか記憶にあるのよねえ、この風景」 「高速道路脇の東京の街並みなんてどこも似たようなもんだろ?」 「いや、そうじゃなくて、この、柵を乗り越えて非常階段へ、というシチュエーションも含めてなんか、デジャブと言うか、なんと言うか……」 「え?おまえ、高速道路の非常階段 なんて使った事があるのか?」 「そりゃ、ないわよ。そのはずなんだけど。何なのかしら、この既視感は?」
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