第2章 史上最低の侵略

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 俺がパソコンを渡すと麻耶は手馴れた手つきでインターネットに接続し、なにやら検索し始めた。プリンターはないので、メモ帳に貴金属店の住所を書き付けた。そして高らかに宣言した。 「さあ、資金調達へ出発!」  俺達三人は総武線と山手線の電車を乗り継いで一路上野駅を目指した。ラミエルの球体を使えばひとっ飛びだろうが、さすがに日のあるうちに大都会の上空をあれで飛び回ったら大騒ぎになる。球体から俺達が出てくる場面を誰かに見られでもしたら、なおさらだ。  というわけで、電車というラミエルにすれば極めて原始的な移動手段を使うことにしたわけだ。もっとも、ラミエルにとっては電車というのがよほど珍しかったらしく、幼稚園児みたいに座席の上で逆向きに、つまり窓の方を向いて座って流れる景色を眺めながらキャーキャーはしゃいでいた。  御徒町駅を一旦通り越して上野駅で降り、まずアメ横に入る。全国的に有名だから知らない人はいないだろうが、上野駅から線路伝いに伸びる東京でも屈指の大きな商店街だ。食品、宝飾品、ファッション、靴など数え切れない程の店が並んでいる。  電車に乗る直前に麻耶が、後から考えればなのだが、余計な事を思い出してしまった。昨夜、ラミエルが麻耶から借りた服では胸が窮屈だと言っていたのを思い出した麻耶は、先にラミエルの服や靴を買って行こうと言い出したのだ。
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