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とにかく町の中へ入って行くと、通りを行きかっているのは全てチョンマゲ、着物の普通のこの時代の日本人ばかりだった。どうやらイケスカンダル人で町があふれているという状況までは行っていないようだ。移住してくるのは完全に地球を乗っ取ってからなのだろう。
しばらく通りを眺めていると、あの有名なダンダラ模様の羽織を来た十数人の侍が通り過ぎた。あれは新撰組の隊士だろう。新撰組は京都にいるはずだが、やはりこのあたりの歴史も微妙に変わっているのだろうか?
すると、その一団から一人の若い侍が俺たちのもとへ走り寄って来た。長い髪をポニーテールのように後ろに垂らして、着物に袴、腰には長刀一本だけを差している。若いもなにも、多分麻耶と同じぐらいの年だな。その若侍は俺たちの前に来ると丁寧に一礼してこう質問してきた。
「あの、失礼ですが、南蛮からいらした方ですか?」
ああ、この時代は幕府が開国して西洋人がちらほらと江戸の町にも現れた頃だったな。21世紀の服を着ている俺たちは、この時代の人たちにはそう見えても不思議はないか。本当の事を話すわけにもいかないから、俺はとっさに話を合わせておいた。
「ああ、まあ、そんなところですけど」
するとその若侍は思いつめたような真剣な表情で言葉を続けた。
「でしたら、ユキムラ・コウドウという医者をご存じありませんか?私の父なのですが」
桂木二尉が後を引き継いで言った。
「ごめんなさい、私たち、ついさっきこの国に着いたばかりで、こちらに知り合いは誰も……」
「そうですか……」
その若侍は心底残念そうな表情になり、ピンと背筋を伸ばしてまた深く俺たち全員に頭を下げながら言った。
「お引き留めして申し訳ありませんでした」
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