19人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はあっけにとられて思わず声をかけた。
「おい、君たちがついてきたのはユミエルのテレパシーで何かを調べるためだったのか?」
ユミエルは照れ隠しにちょろっと舌を出して笑いながら答えた。
「あ、はい、すいません黙っていて。さっき桂木さんに、念のためにイケスカンダルの兵器か何かではないか、確かめて来て欲しいと頼まれまして」
な、そうか、確かにその可能性はあったな。ボケっとしているようでいて、さすがこういう時は現役の自衛官だ。
気付いたらもう夕日が水平線に近づきつつあった。暗くなる前に小夜ちゃんの家に戻る事にして、俺は小夜ちゃんをおんぶして来た道を戻った。小夜ちゃんは相変わらず俺の背中で「兄様、兄様」と歓声を上げてはしゃぎ回っていた。
小夜ちゃんの家の門をくぐると何ともいい匂いが漂ってきた。家に入って土間の隅をのぞくと、小夜ちゃんのお母さんと桂木二尉がかまどの横で料理を作っていた。この匂いは焼き魚と貝の焼き物だな、多分。ご飯が炊きあがるいい香りもする。俺たちが戻ったのに気付いた小夜ちゃんのお母さんは深々とお辞儀をしながら俺に言った。
「まあ、お疲れになりましたじゃろ?ほんとに無理を言って小夜のお守までさせてしまって」
「あ、いえ、とんでもない!こちらこそ楽しかったですよ。ほんとに気を遣わないで下さい」
「はあ、そう言っていただけると。町外れの一軒家の事でろくなおもてなしも出来ませんが、もうじき夕餉が出来ますから、たんと召し上がって下され」
最初のコメントを投稿しよう!