第14章 大魔神カモ~ン

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 そう言ってサチエルとユミエルの背中を押しながら隣の部屋へ歩いて行く。サチエルとユミエルは口を両手で押さえて必死に笑いを噛み殺していた。桂木二尉は二尉で、日本酒の五本目のお銚子を空にしながら大声で笑っていた。小夜ちゃんのお母さんがおずおずといった感じで俺とラミエルに訊く。 「あ、あのう、もしご迷惑なら遠慮なくそう言って下されば……」  俺は顔面が火照っているのを自覚しながら、小夜ちゃんの下から見上げているキラキラ輝く瞳の「お願い」光線に負けてしまって言った。 「い、いえ、こちらこそ、ご迷惑でなければ……それで小夜ちゃんが喜ぶなら」  ラミエルも頬を真っ赤に染めながら言った。 「い、いえ、小夜ちゃんがそう言うのなら。それにお世話になったご恩返しになるのなら……」  というわけで結局、俺とラミエルは小夜ちゃんを真ん中にはさんだ、いわゆる川の字の格好で一つの布団に寝ることになった。小夜ちゃんは布団の中でも俺にしきりとあれこれ話しかけていたが、やがてその声はムニャムニャという感じになり、やがてスウスウと可愛らしい寝息に変わった。  行燈を消したら真っ暗になった部屋の中で、俺とラミエルは気まずい雰囲気を感じながら小夜ちゃんをはさんで寝転がり、何か話しかけようとしてははっと黙りこみ、そんな事を何度も繰り返しながらいつの間にか深い眠りに落ちて行った。  そして俺は体を揺さぶられて目を覚ました。俺の体をゆすっていたのはラミエルだった。もうすっかり夜が明けていて、障子からは日の光が差し込んでいてどこからかチュンチュンという雀の鳴き声が聞こえていた。 「ああ、もう朝か」 「早太さん。とにかくあっちの部屋へ来て下さい。大変な事が分かったんです!」
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