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俺は布団をはねのけて上体を起こした。小夜ちゃんは俺のシャツをつかんだまままだ眠っている。俺は小夜ちゃんを起こさないようにそっとその手をはずし、足音を立てないようにそっと布団から抜け出した。
座敷ではもう小夜ちゃんのお母さんを含めて全員が集まり、桂木二尉はいつになく真剣な顔つきでラミエルのコンパクト型スパコンの画面をのぞきこんでいた。俺も座布団の上に座りながら、ただならぬ気配を察してラミエルに訊いた。
「何か分かったのか?」
「はい。あのタワーの上の銀色の球体こそが、パラレルワールドの安定化装置だったんです。そしてこの世界を安定化させるまでの時間があとたった3時間しかないんです!」
「ちょっと待て!この世界が安定化するって事は、俺たちの方の地球が消滅するって事か?それがあと3時間で?だったら、早くあの球体を破壊しないと!」
桂木二尉が俺たちの方に視線を戻して深刻そうな表情と口調で言った。
「そうなんだけど。今回は単なる偵察のつもりだったから、大した武器は持ってきていないのよ。とてもあの巨大なタワーを爆破出来るだけの物はないわ。それにあとたった3時間じゃ、21世紀に戻って応援を呼んで来るのは間に合わない。それに時間的に間に合うとしても、あの小さな空間では戦車や戦闘機が通り抜けるのは不可能だわ」
「じゃ、じゃあどうしたら!」
その時ガラッとふすまが開いて小夜ちゃんが俺の膝めがけて走って来た。そのまま俺に抱きついてわめく。
「ああん!兄様、ここにいたの」
突然桂木二尉が座布団を横にはねのけて、小夜ちゃんのお母さんの方に近寄り両手を畳について深々と頭を下げた。
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