第14章 大魔神カモ~ン

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「奥様!お願いします。娘さんの、小夜ちゃんの、謡い姫としての力を貸して下さい」  俺は一瞬唖然として、あわてて二尉にツッコミを入れた。 「いや、桂木さん。それは単なる伝説でしょ?」 「いえ、ユミエルさん」  二尉は俺の言葉に取り合わず、ユミエルに顔を向けて訊く。 「何か、ただならぬ気配を、あなた感じたのよね?」 「そ、それは確かに。でも、それが本当にその魔神様と呼ばれる存在なのかどうか、そこまでは」  うろたえながら言うユミエルだったが、二尉は思いつめた表情で言葉を続ける。 「だとしても、その可能性に賭けるしかないのよ。それが単なる伝説なら全ては終わり。だったら万に一つの可能性でも試してみるしかないわ!」  それを黙って聞いていた小夜ちゃんのお母さんが居住まいを正して、別人のようなきりっとした表情になって桂木二尉に言った。 「正直何のお話かは分かりませんが、それは数年前にここへ攻め込んできた異人から江戸の町を守るために、魔神様の力が必要だという事でございましょうか?」  ううん、正確には異人じゃなくて異星人なんだが、ここは余計な口をはさまない方がいいだろう。二尉はもう一度、頭を畳にこすりつける様にして言った。 「はい。その通りです。その魔神様を目覚めさせる力が小夜ちゃんにあるのでしたら、是非!」
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