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「承知いたしました。小夜!」
それは俺にまとわりついてはしゃいでいた小夜ちゃんがびくっと体を震わせて、畳に正座するほどの威厳のこもった声だった。
「小夜や。この方たちが魔神様のお力を必要としておられる。謡い姫としてのおまえの力、今こそ使う時じゃ。出来るか?」
小夜ちゃんも別人のような引き締まった表情に変わり、俺に顔を向けた。
「兄様、魔神様のお力が要るのか?」
俺は黙ってうなずいた。
「うん!兄様のためなら、小夜やる!出来る!」
今度は小夜ちゃんのお母さんが座布団から降りて桂木二尉に深々とお辞儀をした。
「まだ、お役目を引き継ぐ前の未熟者でございますが、こういう時のためにある家でございます。このような娘でお役に立つのでしたら、どうかよろしくお願い申し上げます」
「ありがとうございます。娘さんをお預かりいたします。必ず、無事にお返しいたしますので」
それから俺たちは全員で小夜ちゃんを連れて、あの海岸の崖へと向かった。次の岩場を回れば、あの岩の鎧武者が見えてくる所まで来たが、俺たちの前に二つの人影が立ちふさがっていた。
一人はえらく派手でゴスロリ風のドレスを来た10歳ぐらいの女の子。服装からして欧米人か?もう一人はやけに背が高く細身の、これまた時代がかったエプロンドレスを来た若い女。いわゆるメイドという風体。誰だろう?この時代に江戸に来た西洋人か?
だが、近づくにつれて俺たちは重大な事に気がついた。その二人の髪の色は、紫!イケスカンダル人だ!
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