第14章 大魔神カモ~ン

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 だが、偶然ユミエルと体がぶつかると、意外な事にメイドはあっけなくバランスを崩してよろめいた。その時俺はある可能性に気付いた。小夜ちゃんをラミエルに預けて俺は黒メイドの前に立ちはだかり、ボクシングのファイティングポーズを取った。 「来い!お互いの肉体で勝負しようじゃないか」  そう言った俺にメイドは感心した口調で答えた。 「おや、お気づきになりましたか」  やはりそうか。イケスカンダル人は高度に発達した科学文明に慣れているから、武器や超能力といった科学の産物に対しては強いが、原始的な肉弾戦には慣れていないはずだ。  それに相手は所詮女。俺は全身の筋肉に意識を集中して黒メイドに襲いかかった。そして10秒後、相手に指一本触れる事も出来ないまま、他のみんなが集まっている場所まで吹っ飛ばされた。くそ、格闘技もプロ並みじゃないか、あのメイド。 「もう何よ、かっこつけた割にはだらしないわね」  麻耶が砂浜の上に這いつくばった俺に情け容赦なく言った。桂木二尉が俺と入れ替わりに前に出ながら言う。 「でも、狙いはよかったわよ、早太君。これで戦い方が分かったわ」  そして俺は現役自衛隊員のすごさを間近に目撃する事になった。自衛隊、特に陸上自衛隊の戦闘訓練は壮絶な物だと聞いたことがある。野外演習では60キロもの重さの全装備をかついで、丸三日かけて富士の樹海を走破する訓練もあるらしい。  桂木二尉も陸上自衛隊出身だと言っていたから、当然そうした訓練をくぐり抜けてきたはずだ。やはり極限まで肉体を鍛え上げた自衛官は俺とは違った。何がすごかったのかと言うと、なんと1分近くももったのだ。俺なんか10秒で一蹴されたのに。まあ、ボコボコにやられて這って戻って来たという結果には何の変わりもなかったのだが……
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