第14章 大魔神カモ~ン

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 や、やっぱりダメか。天才麻耶の力を以ってしても……だが、次の瞬間あれほど冷静だったメイドが初めて小さな悲鳴を上げた。 「な!吸い込まれる!」  伯爵を抱いたままメイドの体はなぜか、麻耶の方に磁石で吸い寄せられるように少しずつ引きずり降ろされているように見えた。麻耶は空を切った木刀を持ったまま、軸足を中心に全身を回転させ、ちょうど180度回ったあたりでまた叫んだ。 「龍の!」  そうか!木刀があまりの高速で通過したため、その場所が一時的に真空状態になり、そこへ猛烈な空気の流れが生じてメイドの体を吸い込んでいるんだ。なまじ空中に飛び上がったから空気の奔流に抵抗する術がない。  一撃目はわざと相手にかわさせ、真空に相手が吸い込まれて元の場所へ引き戻された時、一回転してさらに威力を増した刀身が……そういう技だったのか。元の位置まで引きずりこまれたメイドめがけて麻耶の一回転した木刀が迫る。そして麻耶は最後の気合の声を放った。 「ときめき!」  いや、それ、技の名前がビミョーに間違ってないか?龍がときめいて、どうするんだ?
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