第14章 大魔神カモ~ン

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 だが威力は絶大だった。腕に抱えた主人への直撃を避けようとメイドはとっさに体をひねった。だが、それが彼女に出来る最後の、そして唯一の行動だった。一回転して威力を増した麻耶の木刀がメイドの背中に激突した。その衝撃はメイドの体を突き抜けて、女伯爵の肉体にも伝わったらしく、彼女も苦しげな悲鳴を上げた。  そして二人の体はそのまま軽く10メートル、崖の方へ吹き飛ばされた。そのまま砂浜に倒れ込んで二人ともピクリとも動かなくなった。そしていきなり二人の姿は音もなくスッと消え去った。 「くそ!また逃げたか!」  麻耶はそう叫んで木刀を構え直し、上下左右を見回した。俺もそうしたが、もうあの二人の姿はどこにも見当たらなかった。俺たちの背後からユミエルが駆け寄ってきて告げた。 「あれは緊急脱出用の転送装置が作動したんだと思います。戦闘不能になると自動的に基地へテレポーテーションされる、そういう機械があるんです」  そうか。じゃあ、もう邪魔する者はいなくなったという事か。俺は小夜ちゃんに走り寄って彼女の体を抱き上げながら言った。 「大丈夫か?とにかく、これで邪魔はなくなった。早く魔神様の所へ行こう」 「うん!」  小夜ちゃんは怯えた様子もなく、元気にそう返事した。俺たちは小走りであの、巨大な彫像のある崖の前にたどり着き、そこで小夜ちゃんを地面に下ろした。
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