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ううん、なんかどこかで聞いた事のあるような説明だな。二尉が震える声で言葉を続けた。
「この時代には、まだ生き残りがいたのね」
俺は小夜ちゃんに訊いてみた。小夜ちゃんも真っ青な顔で全身を震わせながら、俺の腰に抱きついて怯えていた。
「小夜ちゃん。魔神様というのは、ひょっとして、あの崖の岩の巨人じゃなくて、この巨大生物の事なのか?」
小夜ちゃんは泣き出しそうな声でかろうじて答えた。
「ま、魔神様のお姿はあたいも知らないの。母さまもお婆様も見た事はないって」
その巨大生物はズシンズシンと地響きを伴う足音を立てながらゆっくりと海岸に上がって来る。そして周りを見回し始めた。
「ユミエルさん!」
桂木二尉がユミエルに叫ぶ。この信じられない展開を茫然として見つめていた彼女ははっと我に返った。
「は、はい!」
「あなたのテレパシーで、あの巨大生物を誘導出来る?あの銀色の球体をあいつに破壊させるのよ」
「あ、はい、やってみます」
ユミエルは目を閉じて両手を胸の前で合わせ、精神を集中し始めた。小夜ちゃんが俺の体から離れてユミエルの横へ行き、同じような姿勢を取った。
「小夜もお手伝いする!魔神様、悪いやつはあそこです。あの塔の上の丸い球です」
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