第15章 ヨスガノウミ

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 どちらが効いたのかは分からないが、その巨大生物はゆっくりと例の銀色の球体が乗ったタワーに体を向け、やおらその方向に進み始めた。一歩そいつが歩くたびに俺たちの腹にまで響くような地響きが伝わって来た。 「私たちも後を追うわよ!」  桂木二尉が俺たち全員に言って真っ先に走り出す。俺は小夜ちゃんをおぶって後に続いた。あらためてながめて見ると、恐竜以上に巨大な生物だった。地面から頭まで軽く30メートルの高さがあるだろう。  動きはノソノソという感じだが、なにせ歩幅が長いから俺たちが走ってやっとついていける。海岸から例のタワーまでは意外と近く1キロ程度の距離だった。都合のいい事に町の真ん中を広い通りが貫いていて、タワーまで真っすぐ伸びている。その巨大生物はその大通りを通りぬけて行き、幸い町の人たちは路地に逃げ込んで避ける事が出来た。  タワーの根元が俺たちの目にも見え始めた時、タワーから数本の光の矢のような物が巨大生物に向けて飛び出した。どうやら迎撃用の光線砲のような物らしい。それが当たると巨大生物の体の表面に青白い火花が散り、やつは何かを振り払おうとするかのように体全体を震わせた。  そして数回光線を浴びた巨大生物は突然立ち止まって天に向かってすさまじい咆哮を上げた。 「ガゥオーーーーー」  そして巨大生物は今までとはうって変わったスピードでタワーめがけて突進し始めた。後はあっという間の出来事だった。一気にタワーにたどり着いた巨大生物は、その巨体で体当たりし、そのままタワーのてっぺんの球体を太い両前脚で地面に引きずり落とした。そして大蛇のような長く太い尾が球体を一撃。銀色の球体はまるで卵のからのようにあっけなくつぶれた。
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