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小夜ちゃんは巨大生物の足元にひざまずき、両手を合わせて大声でやつに向けて訴えかけた。
「魔神様。もういいんです。もう終わったんです。どうかお怒りをお鎮め下さい。お山へお帰り下さい」
気丈な様子を見せてはいるが、やはり恐怖に震えていたらしく、小夜ちゃんの目からポロポロと涙がこぼれた。その一滴が巨大生物の脚の先に落ちた。
次の瞬間、巨大生物の顔から猛々しい感じが消えた。やつはゆっくりと頭を元の位置まで持ち上げ、しばらくそのままの姿勢でたたずんでいた。そして小さく「ガウッ」という唸り声を残して、静かに体の向きを変えもと来た道を海の方へ引き返し始めた。俺はまだガクガクしている腰を奮い立たせて小夜ちゃんに駆け寄った。
「小夜ちゃん!大丈夫か?」
「うん!」
小夜ちゃんは俺にしがみつきながら、それでも元気を取り戻した様子で答えた。
「もう大丈夫だ、兄様。魔神様、分かってくれたみたいだ」
俺たちは念のため、巨大生物の後を追って走った。やつはすっかり落ち着きを取り戻した様子で、ゆっくりと海岸へ歩いて行く。そしてそのまま海の中へ身を沈めて元の海底へ帰って行こうとしていた。
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