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俺もここは応援のツッコミを入れておく事にした。
「そうですよ!だいたい、あんなのに裏山に住みつかれたら近所迷惑でしょうが!」
それから俺はユミエルの方に向き直って頼んだ。
「ユミエル、もう一度君のテレパシーを使ってくれないか?あいつにこのまま海に帰ってもらうんだ」
さっきの事があったためか、ユミエルは一瞬顔に引きつった表情を浮かべたが、気を取り直してうなずいた。
「は、はい。なんとかやってみます」
ユミエルは波打ち際に走り寄り、砂浜にひざまずいて両手を合わせ巨大生物にテレパシーを送り始めた。引きつった頬笑みを浮かべて必死にやつに訴えかける。
「あ、あの、何でもないんです……そのままお帰り下さい」
「小夜もお手伝いする~」
小夜ちゃんがユミエルのそばに駆け寄り、同じように砂浜にひざまずいて巨大生物に向けて語りかけた。
「魔神様、どうかおうちへお帰り下さい」
どっちの祈りが通じたのかは分からないが、巨大生物は「ガウッ」と小さな、うなずくような声を上げて、そのまま海の中へ消えて行った。その全身が水中に沈み影も見えなくなるまで、俺たちは海面を見つめ続けていた。
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