第15章 ヨスガノウミ

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「ええと、そうねえ。ざっと計算して羽の差し渡しが……さ……さ!」  二尉は双眼鏡を覗きながら声が裏返ってきた。鈍いこの人もやっと気がついたか。二尉は双眼鏡をはずして俺の方に顔を向け、引きつった声で言った。 「少なくとも30メートルはある事になるわね、あの蛾」  ほら見ろ、言わんこっちゃない。美少女で宇宙人で超能力者なんてコンビがあんな不思議な歌をデュエットなんかしたもんだから、また別なモン呼び寄せちまったじゃないか。俺も引きつった声で二尉に言った。 「あのう、あれが到着する前に、俺たちはこの世界からおいとました方がよくないですか?」 「そ、そのようね。さあ、みんな、戻るわよ!」  俺たちが出て来た時空の穴があるお堂は小夜ちゃんの家の近くだったから、まず小夜ちゃんをお母さんの元へ送り届け、俺たちはお世話になった俺を言って、急用で南蛮の国へ戻る事になったと告げた。  案の定小夜ちゃんは俺に行くなと泣きついてきたが、本当の事を言うわけにもいかないし、言ったところで小夜ちゃんに理解出来る話ではないだろう。ぐずる小夜ちゃんをお母さんが説き伏せ、お堂まで見送りに行くという事で納得させた。  いよいよお堂にたどり着き、まず桂木二尉が一人先に入って異常がないかどうか確認する。二尉が一旦出てきて、小夜ちゃんのお母さんに最後のあいさつをした。 「本当にこの度は何から何までお世話になりました。娘さんのお力までお借りしてしまって」 「いえ、この子がお役に立ったのなら、我が家の謡い姫の家系にも本望でございました。どうか、道中お気をつけて」
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