第15章 ヨスガノウミ

16/18
前へ
/285ページ
次へ
 その時俺は、今出て来た時空の穴の形が崩れているように見えるのに気づいた。ついさっきまできれいな楕円形をしていたのに、今は縁がアメーバみたいにグニャグニャになっている。俺は傍らの道路の上に座り込んでいるラミエルに訊いてみた。 「なあ、あの時空の穴、様子が変じゃないか?」  ラミエルはよほど体力的にこたえているらしく、まだ肩で息をしながら答えた。 「あの世界はもうすぐ消滅しますから。わたしたちがあの球体を破壊したので、パラレルワールドは存在できなくなります」 「そうなのか?いや、ちょっと待て。だったら、あっち側の江戸の町にいた人たちはどうなるんだ?」 「それはもちろん、一緒にこの宇宙から消滅……あっ」  ラミエルは途中で言葉を呑みこんで、あわてて両手で自分の口を押さえた。だが、俺はもうそれに気づいていた。俺が踵を返して時空の穴の方へ歩き出すと、ラミエルと麻耶が後ろから追いかけて来た。 「早太さん、どこへ行くんですか?」  俺は振り向きもせずに返事した。 「決まってるだろ。小夜ちゃんを連れて来るんだ、こっちの世界に」  ラミエルは急いで俺の前にまわりこみ叫んだ。 「だめです!それは出来ません。そんな事をしたら、またパラレルワールドのバランスが不安定になって何が起きるか」 「けど、小夜ちゃんも消滅してしまうじゃないか、あの世界と一緒に!」 「そ、それは……」
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加