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その時俺は、今出て来た時空の穴の形が崩れているように見えるのに気づいた。ついさっきまできれいな楕円形をしていたのに、今は縁がアメーバみたいにグニャグニャになっている。俺は傍らの道路の上に座り込んでいるラミエルに訊いてみた。
「なあ、あの時空の穴、様子が変じゃないか?」
ラミエルはよほど体力的にこたえているらしく、まだ肩で息をしながら答えた。
「あの世界はもうすぐ消滅しますから。わたしたちがあの球体を破壊したので、パラレルワールドは存在できなくなります」
「そうなのか?いや、ちょっと待て。だったら、あっち側の江戸の町にいた人たちはどうなるんだ?」
「それはもちろん、一緒にこの宇宙から消滅……あっ」
ラミエルは途中で言葉を呑みこんで、あわてて両手で自分の口を押さえた。だが、俺はもうそれに気づいていた。俺が踵を返して時空の穴の方へ歩き出すと、ラミエルと麻耶が後ろから追いかけて来た。
「早太さん、どこへ行くんですか?」
俺は振り向きもせずに返事した。
「決まってるだろ。小夜ちゃんを連れて来るんだ、こっちの世界に」
ラミエルは急いで俺の前にまわりこみ叫んだ。
「だめです!それは出来ません。そんな事をしたら、またパラレルワールドのバランスが不安定になって何が起きるか」
「けど、小夜ちゃんも消滅してしまうじゃないか、あの世界と一緒に!」
「そ、それは……」
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