第16章 エピローグ

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 俺が意識を取り戻した時にはもう夕日が窓のガラスをオレンジ色に染めていた。そこは市ヶ谷の防衛省の医務室だった。窓の外から自衛隊員のランニングのかけ声が聞こえていた。俺は腹を押さえながらベッドに上体を起こした。もう痛みは感じていなかった。  そろりとベッドを区切るカーテンがめくられ、恐る恐るという風にラミエルが俺の顔色を上目づかいにうかがいながら入って来た。 「あ、あの早太さん……大丈夫ですか?」 「ああ、なんとかな」 「あの、ごめんなさい」 「何がだ?」 「それは、その、あの世界が、そして小夜ちゃんもこの宇宙から消滅してしまう事を隠していた事で……」  俺は無言でラミエルの方に右手を伸ばした。ラミエルは小さく「キャ」と悲鳴を上げて反射的に両手で顔を覆った。が、俺の手はラミエルの頭の上に伸び、やさしく髪を撫でた。 「いや、いいんだ。俺だって君たちの判断の方が正しかった事は理解してるさ。ただ、頭ではそうと分かっていても、何というか、ここが……」  そう言って俺は自分の胸を左手の指先でトントンと叩いた。 「ここで納得できなかった、と言うか。はは、やっぱり俺たち地球人はそういう所で原始人だな」 「あの、これは気休めでしかないとは思うんですけど」  そう言ってラミエルはポケットからコンパクト型スパコンを取りだした。 「もしかしたらと思って、あれから確率の計算をしてみたんです。あっちの世界では歴史の分岐がまだ始まりかけたばかりでした。ですから、わずか十数パーセントの確率でしかないんですが……あっちの世界の事象が、こちら側のわたしたちがいる、この地球の歴史に統合された可能性があるんです」 「それは……どういう事なんだ?」
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