第16章 エピローグ

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「つまり、小夜ちゃんはこちら側の歴史の一部に吸収されてそのまま存在していた、そういう可能性がゼロではないという事です」 「ほ、本当なのか?」 「はい。ただ、あくまで確率としてはあり得るというだけで、その確率も10パーセントぐらいしかありません。それにそうだとしても、確かめる方法はないんですが」  俺はラミエルの頭から手を離し、窓の外に目をやった。窓越しに見えた空は、あの江戸の町から見た空と何も変わっていないように見える。今も150年近く前のあの空も、何も変わっていない。人間の命だけが移り変わっていくだけで。俺はベッドから降りながら誰にともなくつぶやいた。 「それで、いいのかもしれないな」  医務室のドアを横にガラッと開くと、麻耶とサチエルとユミエルが折り重なってこっち側に倒れてきた。一緒にドアにもたれかかって耳をあてて中の様子を盗み聞きしていたらしい。 「何をベタなお約束やってんだ、そろいもそろって」  俺が呆れてそう言ったところに、桂木二尉がルンルンとステップを踏みながら廊下の角から現れた。二尉は満面に笑みを浮かべて俺たちに言った。 「あら、ちょうど良かったわ。全員いるわね。明日から一泊二日でキャンプよ」 「はあ?どういう事です」
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