第16章 エピローグ

10/14
前へ
/285ページ
次へ
 歌が終わった時、俺の両目からはボロボロと涙がこぼれ落ちていた。俺ほどではないが、桂木二尉以外の他のみんなもうっすら涙ぐんでいた。それを見たマヨちゃんのお婆さんが驚いて訊いた。 「あ、あの、どうかなさいましたか?」  俺は掌でゴシゴシと目をこすり無理やり笑顔を作って答えた。 「あ、いえ。なつかしい歌を久しぶりに聞いたもんで、感動しちゃって」 「あれまあ、こんな田舎の古めかしい歌が、都会のお若い方にそんなに?」  桂木二尉が話を引き取った。 「現代っ子にはかえってそんなものですよ。あら、これは長々とお邪魔してしまって。私たち沢に水を汲みに来た途中でした。さ、みんな、そろそろ失礼しましょう」  マヨちゃんと彼女のお婆さんに手厚く礼を言い、俺たちは沢に下りる道を下った。ユミエルが指先でそっと目頭をぬぐいながらサチエルに言う。 「なんだか、感激してしまいました。こんな偶然って本当にあるんですね、おねえさま」  サチエルも潤んだ目で答える。 「わたくしもですわ。この惑星でなら、さしずめマリア様のお導きとでも言うのでしょうか」
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加