第3章 女たちの大和

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 麻耶がそう言うとラミエルは例の黒い箱を球体の床に置く。すると床のその部分だけがほのかな赤い光を発し、すうっと箱を吸い込んだ。  数秒後、俺達が透明になった床から見ている海中を、あの箱が飛ぶように横切って行くのが見えた。箱はそのまま戦艦大和の残骸の方へ向かい、そこへ吸い込まれるように見えなくなった。  一見何の変化も起こっていないように見えるが、ラミエルが言うには箱を構成している素粒子が大和の艦体に入り込んで同化しているのだという。 「よし、じゃあ基地へ帰還!後は任せたわよ、兄さん」  司令官気取りの我が妹殿のご命令だ。いや、ま、確かに今のこいつは地球征服作戦の司令官みたいなもんなんだが。  俺達を乗せたラミエルの球体は念のため東京湾まで海中を移動し、さらに隅田川を潜行して、俺のアパートの近くまで戻った。その間わずか一時間足らず。いつも思うのだが、すごいテクノロジーだ。  麻耶は実家へ帰ることにし、最後俺にこう念を押した。 「いいこと、兄さん。ちゃんと性能を正確に再現するのよ」
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