第3章 女たちの大和

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 それから俺達は隅田川の近くまで歩いていき、そこでラミエルの球体に乗って水中へ移動、川の中を通って東京湾へ出て、それから一路鹿児島沖へ向かった。目的地の海底に着くと、そこには見事に復元された戦艦大和が浮上の時を待っていた。裂けた船体や壊れた砲や機銃も完璧に復元されている。  俺達を乗せた球体はそのまま大和の艦橋に入り込み、今からここがこの新生大和の操縦室になるのだ。 「浮上開始よ!」  麻耶の号令でラミエルがコンパクト型スパコンを操り、大和は海底を離れ急激に海面へと浮上する。上部構造が水の上に飛び出した瞬間、大量の海水が船体のあちこちから滝の様に落下する。  念のため主砲、副砲、機銃をひとつひとつ動かしてみる。全てちゃんと動く。六十年以上の長き時を経て、今日本の誇る巨大戦艦は復活した!  一分間ほど、何とも言えない深い感動を堪能して、俺は肝心な事を聞いていなかったのに気づいた。 「で、これからどこへ行くんだ?」  麻耶は澄ました顔でこともなげに答えた。 「もちろん東京よ。まず手始めに日本を征服するの。これからヤマトが来るから降服しなさいってメールをネットカフェから首相官邸にもう出してあるわ」  用意のいい奴だな。俺は半分呆れながらも、心が高揚してくるのを抑えきれずにいた。
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