第3章 女たちの大和

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 ここからは全部麻耶から聞かされた話なのだが。  戦艦大和はその見た目のすごさとは裏腹に、悲劇の超兵器だったのだ。第二次世界大戦の一部として日本がアメリカ、イギリスと太平洋戦争を始めた当時、既に兵器としての主役の座は飛行機に移っていた。  大和の建造が始まったのは一九三七年、来るべきアメリカとの戦争に備えてだ。就役したのが1941年12月16日、つまり太平洋戦争の始まりである日本海軍の真珠湾攻撃の直後。  実はこの真珠湾攻撃こそが戦争の歴史を変えたのだ。日本海軍は航空機による攻撃で戦艦アリゾナを含む米海軍の太平洋主力艦隊を壊滅させた。つまり日本海軍自身が、大和のような大艦巨砲の時代は終った、これからは航空兵器の時代だという事を世界に思い知らせたのが真珠湾攻撃だったわけだ。  逆に言えば大和のような馬鹿でかい砲艦は航空機に束になって攻撃されたらひとたまりもない。大和は完成した時には既に時代遅れの兵器になってしまっていたのだ。  大和は戦争の重大な局面ではまったくと言っていいほど出番が無く、最後にはそれを自ら証明するかのように、米軍の猛攻撃を受けていた沖縄に向けて、戦闘機の護衛もなしにわずか数隻の駆逐艦と共に「海上特攻」として出撃する。
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