第3章 女たちの大和

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 何のことはない、大和は沖縄の米軍艦隊にやられる事を前提にして出撃させられたのだ。しかも、海の特攻隊として華々しく最期を遂げるはずの場所であった沖縄にたどり着くことすら出来ず、待ち構えていた米軍の航空部隊の波状攻撃を受けて鹿児島沖であえなく沈没した。  そういう悲劇的な生涯を送った戦艦だったのだ。一説には「世界三大愚行」の一つに戦艦大和が含まれるとも言うらしい。馬鹿でかいだけでいざという時には何の役にも立たなかったという意味で、だ。  ちなみにあとの二つはエジプトのピラミッドと中国の万里の長城。ピラミッドは墓荒らしの侵入を防げなかったし、万里の長城はモンゴル帝国が中国本土に攻め込んで来た時に簡単に突破されてしまったからだそうだ。  そして俺は表面的な大和のすごさに目を奪われて、戦後の兵器の発達の事をすっかり忘れていた。レーダー、追跡ミサイル、コンピューター制御の対空機銃などなど。これらの最新鋭兵器で武装した現代のイージス艦にかかれば、第二次世界大戦当時の戦艦なんて射撃訓練の恰好の的にしかならない。  そう、俺は基本的には、六十年以上前の、現代においては時代遅れの代物でしかない兵器の性能を「正確に再現」してしまったのだ。
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