第3章 女たちの大和

25/25
前へ
/285ページ
次へ
 この長々とした解説は大和から脱出したラミエルの球体の中で聞いていた。こっちが先に主砲をぶっ放したものだから自衛隊も遠慮なく反撃出来る。  いや現代の兵器のすごいのなんの。どうやら前方のイージス艦は俺達の注意を惹きつけるための囮だったらしい。ミサイルの雨はなんと後方から降り注いで来た。そっちのイージス艦は水平線の向こう、俺達からは見えないはるか遠くから正確に大和めがけてミサイルを命中させたのだ。  航空自衛隊も負けてはいなかった。戦闘爆撃機が空からもミサイルの雨を降らせる。  艦橋が被弾するにおよびついに俺達は大和を捨てて、ラミエルの球体で海中に飛び込んでその場から潜行しつつ離脱した。ひらたく言うとほうほうのていで逃げ出したのだった。  そして俺達の大和は、自衛隊の猛攻撃を受けてわずか三十分で再び海の藻屑と化し、沈んで海底に消えていった。  以下は、自衛隊に見つからないように海中深くを潜行して東京へ帰るラミエルの球体の中で俺と麻耶が交わした会話。 「ああ!もう!この馬鹿兄貴!ヤマトって言ったらあっちに決まってんでしょ!宇宙戦艦に!」 「いや、俺そっちのヤマトはよく知らなかったんだよ。最初の二、三話見て、つまらなさそうだったから後は見なかったんだ。それにお前だって『宇宙戦艦』とは一度も言わなかっただろうが!」 「それでも常識で考えりゃ分かりそうなもんでしょ!六十年以上も前の戦艦なんか今の時代に何の役に立つのよ?」 「まあ、ラミエルのとこにはあと二回何か届くわけだし……ま、最初はこんなもんさ。失敗は成功の母って言うだろ?だから……な……」  第二回地球征服作戦、戦艦大和の資料本代合計一万三千円。ラミエルの軍資金は前回使い果たしているので収入はゼロ。締めて一万三千円の赤字。しかも全額俺の持ち出し。とほほ……
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加