第4章 麻耶対アメリカ、経済戦争

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 東京は大都会、人間関係も希薄で……などとよくテレビで評論家が、したり顔で言っているが、俺のアパートの周辺はいわゆる下町。こういう人情のある個人商店も結構まだ残っている。  ラミエルはよっぽど感激したらしく「ありがとうございます」を連発してその店が豆粒ほどの大きさになるまで遠くに離れても何回も振り返って頭を下げていた。 「わたしの星では、食料を他人にただであげるなんて考えられない事なんです」  アパートへの帰り道、コロッケの入った紙袋をまるで宝物みたいに大事に胸に抱えて彼女はそう言った。なるほど、他の星を征服しなきゃならないほど追い詰められた社会なら、そうなのかもしれないな。  さて今回の軍資金を何にどう使うのか、これは麻耶の担当だ。手をつけずに置き、翌日ラミエルの例の赤い球体に新しい兵器が届いた。なんかパソコン付属のスキャナーみたいな形だったが、ラミエルが説明書を読むとどんな物質でもそっくり同じコピーを作れる機械なのだそうだ。  それだけ聞くとすごそうだが、コピーできる物の質量、つまり重さは10グラムまで。それに作り出すコピーの数に制限はないが、元の物質を指定出来るのは一度きり。  相変わらずテクノロジーとしてはすごいが、使い方はせこいとしか言いようのない物が送られて来たな。
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