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遠慮のかけらも見せずに部屋にずかずか入り込んで来たのは、妹の麻耶だった。麻耶は目ざとくラミエルを見つけると、ニヤッと嫌な笑いを浮かべてこう言いやがった。
「五千円で手を打つよ」
「な、何の事だ?」と怒鳴り返す俺。
「浪人生が、親の金で借りてるアパートに女連れ込んでたってチクられてもいいわけ?口止め料五千円、安いもんでしょ?」
「あ、あの……」
ラミエルが消え入りそうな声で割って入った。
「妹さんなんですか?」
その頃になってやっと、麻耶も彼女の格好の不思議さに気づいたらしい。数秒間じっと彼女を見つめた後、不意に握った右手を開いた左手にポンとたたきつけて……
「彼女、アキバのウェイトレスさん?最近はそういうのが流行ってるの?」
「なんでそうなる!」と俺。
「それにしても綺麗な人ねぇ。兄さん、どうやってだましたの?ああ、それとも何か弱みを握って……」
「だから、なんでそうなる!」
妹は軽口をたたきながらも、その目はラミエルの全身をじっくり観察していた。自分のライバル足り得る美人を見るときはいつもこうだ。
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