第4章 麻耶対アメリカ、経済戦争

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 まあ相手が信じたかどうかはともかく、米ドルの現金の束をその場で何十と積み上げて見せれば、たいていの相手はそれ以上追及しては来なかった。  そんな感じで俺たちは世界中を飛び回って百ドル札の束をばらまいて回った。  ある時はロシアの港町でいかにもギャング風の男たちに会い、イタリアではマフィアのボスらしき凄みのある男と会い、アフリカのある国では政府の偉いおっさんとその国の反政府ゲリラの指導者の両方に百億ドルずつ渡した。  インドではチベット亡命政府に五百億ドルの資金提供を申し入れ、中東では反アメリカを唱える連中ならどんな組織でもお構いなしに百億単位のドルをばらまいた。  途中に孤児院とか福祉施設とか見つけると、そこのポストに百万ドルほど放り込んだりもした。こういうところは麻耶も人情味がある。  しまいにはラミエルの球体を飛ばして空から各国の貧民街に文字通りお札をばらまいた。おそらく球体はUFOとして目撃されてしまっただろうが、最近は麻耶も球体を見られる事にあまりこだわらなくなった。  それに金を拾った連中が正直にUFOから降ってきたなんて言うわけはなし、仮に正直にそう言ったからって誰も信じないだろう。  麻耶は学校があるので世界巡りは大体日本時間の夜と休日に行ったが、この二週間で一体総額いくらの米ドルが世界中にばらまかれたか、もう俺たち自身にも分からなくなっていた。ただ、世界経済を大混乱させるに十分な金額だった事だけは確かだ。
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