第4章 麻耶対アメリカ、経済戦争

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 その最初の兆候は作戦開始から十三日目、シンガポールの外国為替市場で発生した。  俺たちは日本の俺のアパートの部屋にいて、テレビの朝方の経済ニュースでそれを知った。といっても俺の部屋にはテレビはなく、携帯のワンセグの画面で見たのだが。画面が小さいから俺と麻耶とラミエルでほっぺたをくっつけ合った状態で見た。麻耶はともかく、ラミエルの頬の感触はなんとも気持ちよくて……  いや、そんな事楽しんでいる場合じゃない。その前日シンガポール市場で米ドルが異常な下げを記録したのだ。円、ユーロに対して一日で7パーセントも価値が下がった。  そしてその動きは太陽の動きを追いかけるように、ロンドン市場、ニューヨーク市場、そして東京市場へと波及していき、次の日には世界のほとんどの通貨に対して米ドルは四十パーセント以上の下げを記録した。日本では米ドルの交換レートが1ドル50円台まで行った。  麻耶の狙いは的中した。アメリカの経済は大混乱に陥り、わずか二週間の間に三つの投資銀行と十以上のヘッジファンドとかいう物が破綻した。アメリカの政府も中央銀行も全然知らない、発行した覚えがない百ドル札が何億枚、あるいは何百億枚だろうか?突然世界中に出現したのだから当然だ。
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