第4章 麻耶対アメリカ、経済戦争

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 が、上手くいったのはそこまでだった。俺たちが今回の作戦を開始して十七日目、全ての混乱はあっけなくおさまってしまった。それはアメリカのFBI長官の全世界同時中継のテレビ番組での発表によってだった。  今回の大量のドル紙幣の流出は偽札事件だったと発表されたのだ。それはその通りだ。ラミエルの物質複製機で作った百ドル札だったのだから・・・でもなんでばれたんだ?  FBI長官の言葉を同時通訳している日本のテレビのニュース番組を食い入るように見ていた俺たちは、この言葉で自分たちがとんでもない大ポカをしでかしていた事実にやっと気付いた。 「今回大量に発見された百ドル紙幣は全て通し番号が全く同じであり、FBIは過去に例を見ない大規模な通貨偽造事件として……」  しまった!どこの国の紙幣にも偽造を防ぐため一枚一枚に十ケタぐらいの番号が印刷されている。俺たちが世界中にばらまいた百ドル札は、俺が近所の銀行で手に入れてきた百ドル札のコピーだから、その番号も全部同じだったんだ。  最初は何がなんだか訳が分からず混乱していたアメリカだが、番号が同じという点に気がつけば打つ手は簡単だ。世界中の金融機関にその番号を連絡し、もしその番号の百ドル札を見つけたら知らせるように言っておけばいい。  アメリカ政府はさらに世界中の主要な新聞に全面広告を出し、例の百ドル札の通し番号をでかでかと表示して、この番号の百ドル札を見つけたらすぐに地元の警察に連絡を、と発表した。  麻耶が企んだアメリカ経済の混乱はこうしてわずか三週間足らずであっけなく終息してしまった。
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