第1章 銀色の侵略者

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 この妹、同じDNAの組み合わせから生まれたとは到底信じられない程容姿はいい。モデルクラブのスカウトが実家まで「ぜひお嬢さんをうちの事務所に」と押しかけて来たことが一度や二度じゃない。  細面で目は切れ長、漆黒と表現しても大げさじゃない黒髪を腰の近くまで伸ばして、都内のとあるお嬢様学校として有名な私立女子高に通っている高校一年生だ。今日もその学校の夏服のセーラー服姿だった。さぞや何人もの男がこいつとすれ違った直後に電柱や看板にぶつかったことだろう。  性格も素直で可愛い、おしとやかな純真な女の子という事で通っている。あくまで世間では、だが。俺はこいつの本当の性格というか本性を知っている数少ない身内の一人だ。  こいつ頭は悪くはなく学校の成績もまあ上の方だ。だが、本当の頭の良さというのは百パーセント悪知恵の方だ。小さい頃から腹黒いとしかいいようのない子で、しかも他人の前ではそんな事をおくびにも出さないという技を生まれながらにしてみ身につけている。 俺が一日も早く実家を出たかった理由というのはこの妹の存在に他ならない。昔からどれだけ妹に振り回されてひどい目に遭ってきたことか……このアパートに引っ越した時はやっとこれでこいつから解放されたと思ったのだが。  とはいえ、さして遠距離というわけでもないし、妹の方はとっくに夏休み入りしているから、こうやってちょくちょく俺をいじりにやって来る。それにしても今回は最悪のタイミングでやって来たもんだ。確かに夜の時間に若い女の子と二人きりでいるところを見られちゃなあ……
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