第5章 全人類人質計画

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 確かに張り紙にそんな事が書いてある。よく見たらS定食をどうぞ、とも。俺は英語は苦手だが、いくらなんでもこの程度の単語なら分かる。table はテーブルだろ。日本語で言えば食卓。で、for は~のために。そしてtwo は数字の2。だから……ありゃ、さっぱり分からん。  幸いもう一時近くでお客も少なく空いていたので、配膳カウンターの向こうのおばさんに訊いてみた。 「ああ、あれかい。まあ、今週だけのスペシャルメニューで、一種の社会貢献てとこだね。」 「社会貢献……ですか?」とこれは俺。 「あたしもよくは分からないんだけどさ、S定食ってのはカロリー控えめの健康メニューなのよ。うちの職員さん達もメタボ気味の人多いからね。で、そのメタボ気味の人たちが健康とダイエットのためにS定食頼んでくれると、節約した材料費の二十円がどっかの社会奉仕団体に寄付されて、貧乏な外国の子供の学校給食一回分になるんだってさ」  俺はサンプルの棚のS定食に目をやった。野菜の煮物、冷や奴、海藻サラダがおかずの、確かにダイエットには良さそうなメニューだ。 「あの……二十円で子供の一食分なんですか?」  ラミエルが心底驚いた様子で、カウンターから身を乗り出さんばかりにおばさんに顔を近づけて訊いていた。
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