第5章 全人類人質計画

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「ああ、その話なら、なんか聞いた事はある。大企業の社員食堂なんかでもやっているみたいね」  ううむ、さすが麻耶。よく知ってるな、そんな事。俺なんか今日初めて知ったのに。  ラミエルが首をかしげながら言う。 「でも、どうしてそんなに食糧の配分に差があるんですか?足りない所があるなら政府が食糧を回してあげればいいはずなのに」  麻耶が妙に真剣な表情で答える。 「だって、その国の政府にお金がないんじゃ、どうしようもないじゃない」 「はいっ?」  急にラミエルが素っ頓狂な声を出した。 「あの……地球には政府が複数あるんですか?」 「政府って言ったら、その国の政府だからたくさんあるに決まってるじゃない。今、国が二百ぐらいあるから、それだけの数の政府があるわよ」 「いえ、そうじゃなくて……地球全体を統治している政府は無い……という事なんですか?」  俺と麻耶は思わず顔を見合わせて、一瞬後に二人そろって大きくうなずいた。そうか、ラミエルの星では国家とか国境なんて物はもうとっくに無くなって星全体が統一されて、一つの政府になっているのか!  麻耶がふっと溜息をつきながら言った。 「ああ、なるほど。地球連邦政府とか、そんな物ね。残念ながらこの地球にはまだそんな物無いの。SF小説の中のお話ね。ああ、もっとも国際連合という組織はあるんだけど、あれは国同士の話し合いや交渉を取り持っているだけで、ラミちゃんの言う政府とはちょっと違うのよね……」
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