第5章 全人類人質計画

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 そして俺たちは球体の外へ出て国連総会ビルの屋根の上に降り立ち、俺の前に立ちふさがるように麻耶とラミエルが並んで立つ。  で、俺の格好はというと、この前の作戦で買ったビジネススーツにネクタイ。まあ宇宙服は二つしかないのだから、これは仕方ないとしよう。顔を隠す物が必要だが、なぜか麻耶が俺に渡したのは祭りの屋台で売っているようなおもちゃのお面。それもどうやら、親父の子供時代に流行ったテレビアニメか何かのキャラのお面だ。頭のてっぺんから青い頭巾をかぶって、どんぐり眼と両方の頬には赤い渦巻模様がくるくると描かれている。確か忍者で名前がハットリだかヤキトリだか、そんな感じの……  だったら全身忍者のかっこうにすればいいのに、と思うのだが麻耶はそのお面を渡しながら俺にこう言った。 「最近はね、そういうかっこうの方が謎の秘密組織の指導者っぽく見えるのよ」  なぜそうなのかは今でも理解出来ないが、こいつの言うことは結構一理ある事をこれまでの経験で多少は分かって来たので、ここは麻耶の言うとおりにした。俺たちが立っている屋根の下に十分な数の人間が集まってきた頃を見計らって、俺はまず左腕をまっすぐ上に上げ、人差し指だけをさらにまっすぐ上にピンと伸ばした。  ううむ、ほんとにこれで「謎の秘密組織の指導者っぽく」見えるものなんだろうか?
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