或る男の日記

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7月10日 今日は村長さんに連れられて、村の集会に出た。 少しばかり緊張するが、これも村に早くなじむためだ。 村の集会所には大勢の人たちがいた。60人前後だったろうか。 あとで村長に確認したところ、村の総人口は75人とのこと。つまり私たち夫婦のためにほとんどの人が駆けつけてきてくれたということになる。 緊張しながらも前に立ち、挨拶をすると、皆さんが大きな拍手をくれた。 本当にいい人たちだ。 その後は皆で宴会となった。 私は取り囲まれ、次々に質問を浴びせられたので大変だった。 この村は、ほぼ世間と隔絶しており、越してくるものは珍しいのだという。 お陰で、始終話し続け、酒を飲まされ続けたのでもうくたくただ。 酒には強いほうだが、この日記を書いている今でも眠くてしょうがない。 妻はさすがに酒は飲まされなかったが、質問攻めにあったのは私と同じようで、少し疲れたような顔をしていた。 だがそれ以上に目を輝かせ、いい人ばかりで話も楽しかった、ここにきて正解だったと語った。 私も同意見だ。 ……ああ、もう駄目だ。さすがに眠い。 明日に備えて、早めに寝よう。
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