或る男の日記

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7月11日 体中が痛い……。 体力には自信があるつもりだったが、初めての農業は体に堪えた。 都会人の生半可な鍛え方では、畑には到底勝てなかった。 体力にはそこそこ自信があります、などと言っていた自分が恥ずかしい。 これから毎日、畑仕事か……。 だがこれも、この村で生きていくために必要なことだ。 この村では、食料は完全に自給自足なのだから。 いまどき、田舎でも珍しいと思う。 地理的に交通が不便なところなので、自給自足でなくてはやっていけなかった時代の暮らしを、そのまま受け継いでいるようだ。 さすがに、魚や嗜好品は手に入らないので、近くのスーパーまで買いに行くそうだが、その『近く』というのがまさか30kmも離れているとは思わなかった。 さすが、田舎。距離の感覚が都会人とは大分違う。 非常に疲れたが、同時にすがすがしい気分でもあった。 体を動かして仕事をすることは、ここまでも爽快感を伴うものだったのか。 しばらくは、ご近所の畑を借りて、農業経験を積まなくてはならないだろう。 土地はあるので、早く自分の畑が持ちたいものだ。 さて、明日も早い。もう寝なくては。
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