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弍
鎌鼬は、いつの間にか眠ってしまっていた。
不死城の城下町。
鎌鼬に与えられたのは、山の中腹に建てられた武家屋敷だった。庭に面した和室で、畳の上で目を覚ました。
そのような家屋が、妖にとって住み心地が良いのか別にして、鎌鼬は畳の上の寝心地を気に入った。
再び受け入れた、大妖の妖気はすっかり体に馴染んだ。
腹部の傷も癒えている。
頭の中には、折原 洋輔を討伐する事だけであった。
父の事。
弟の事。
家族での未来の事。
妖気を受け入れるまでは、頭の中にあった筈の事であったが、今は欠片ほども考えていない。
まるで、元々存在していなかったのようだ。
「折原と九条を倒し、極点の結界を打ち破り、大妖さまに報告する。それこそ、我が使命」
鎌鼬の言葉に、迷いは無い。
妖気の影響で、その記憶や精神がねじ曲げられたようである。
鎌鼬は、庭に出た。
広い庭には、大妖から与えられた小妖と九十九神が待機している。
その数、三百以上。
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