第五章 前進

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         弍    鎌鼬は、いつの間にか眠ってしまっていた。  不死城の城下町。  鎌鼬に与えられたのは、山の中腹に建てられた武家屋敷だった。庭に面した和室で、畳の上で目を覚ました。  そのような家屋が、妖にとって住み心地が良いのか別にして、鎌鼬は畳の上の寝心地を気に入った。  再び受け入れた、大妖の妖気はすっかり体に馴染んだ。  腹部の傷も癒えている。  頭の中には、折原 洋輔を討伐する事だけであった。  父の事。  弟の事。  家族での未来の事。  妖気を受け入れるまでは、頭の中にあった筈の事であったが、今は欠片ほども考えていない。  まるで、元々存在していなかったのようだ。 「折原と九条を倒し、極点の結界を打ち破り、大妖さまに報告する。それこそ、我が使命」  鎌鼬の言葉に、迷いは無い。  妖気の影響で、その記憶や精神がねじ曲げられたようである。  鎌鼬は、庭に出た。  広い庭には、大妖から与えられた小妖と九十九神が待機している。  その数、三百以上。
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