2699人が本棚に入れています
本棚に追加
「……で、何でしたっけ?」
凛先輩をからかっていたら本来の質問を忘れてしまった。俺がそう言うと、先輩は呆れている様子だった。
「真中シンは"何でも出来る"のに"出来ない"ことがあるのか、と言うことだ」
「あー」
──なるほど。
俺は先輩に愚痴のように、真中心は何でも出来ると言い続けてきた。それで今日のセリフが気になったのか。
「その言葉の通りの意味っすよ、アイツは何でも出来るけど──出来るからこそ出来ないこともあるんです。……意味分かります? 矛盾してるようで、してないんですよ」
挫折を味わったことのないアイツだから、アイツは絶対に諦めない、逃げ出さない。
アイツに欠点があるとするなら、まさにそれだろう。
そして、それがアイツの出来ないこと。
……そういう意味では、アイツも何でもは出来ないのか。そう考えると、何だか嬉しい。
「ふむ」
凛先輩は再び思案顔。
俺はその間にマウスを動かして、カチカチ操作をする。メールフォルダを開いた直後に、先輩はパソコンを指差して尋ねてきた。
「その案件が彼の出来ないことなのか?」
最初のコメントを投稿しよう!