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あっ―
岩影の向こうに一瞬頭が浮いた。
砂浜に降りて、大声で叫んで手を振った。
私「お~ぃ!長谷川 猛!」
全く気付く様子はない。
更に呼ぶとこっちを見たような気がした。
すると、水面にあった小さな頭が、小島に近付き、上がってくる。
私は道の出来たとこを通り、小島に近付いて行く。
彼だ―
昨日、私の目の前で飛び降りた彼がいた。
猛「なんだ。自殺姉ちゃんか。」
私「死んで無かったんだね…良かったぁ…」
私は彼の姿を見てホッとした。
と同時に何故か涙が出た。
猛「俺は死なないよ。決められたその日までは。」
そう言って、彼は私を無視する様に私の横を通り過ぎて、浜の方へ歩いて行った。
私「ちょっと!待ちなさいよ!女の子が泣いてるのよ!」
彼は黙って振り返る事もなく歩いて行く。
私は後を追いかけた。
彼の身体は無駄な肉など無く、引き締まった筋肉に海水が輝いて見えた。
彼の左手には、みかんを入れるネットにサザエがはち切れない程に入っていた。
私は、小走りで彼に追い付き、
私「ちょっと!これ…」
上着を差し出した。
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