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案の定、担任はすごく面倒そうな表情を浮かべて私の椅子を引き上げてくれた。泥まみれになっている椅子に座るわけにもいかず、ホースのつながった水道で泥を洗い流して借りた雑巾で綺麗にしてから教室に戻して、私は救護テントでずっと運動会を見ていた。
3組のクラスメートと一緒に応援したり、リレーの選手になっている姉を見て、羨ましいとかそういう感情よりも先に「元気だな」と思っている自分がいた。
元々活発で、転校する前もバスケ部に入っていた姉は例外なく転校先の学校でもバスケ部に入部した。
「笆音、具合悪かったの?」
「少しね」
家への帰り道、そう聞かれて私は曖昧に言葉を濁した。
具合が悪かったかどうかなんて、朝一緒だったんだからわかるでしょ。
言わないけど、そんなことを思いながら私は足元の石を蹴った。
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