二章・黒いヒト

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   ああもう、誰かこのヒトを止めて。  この、天然なのかわざとなのか解りにくい我が姉を止めてあげて。  と言うか、殴っていいかな?  むしろ殴っていいよね?  誰も咎めない気がしてきた(実際、殴ったりしたらかなり怒られるだろうけれど)。  でも。 「それじゃ改めて。 光、婚約おめでとう」 「……殴っていい?」  本気で。マジで。  引きつった笑顔で問い掛けた私に、美咲は刹那きょとん、としてから、鷹揚に頷いた。 「別にいいよ?」  ……ここでひとつ補足しておくが、美咲は決してMではない。 「全力で殴り返してもいいならね」  にこり、と。  ベッドに腰掛けた美咲は微笑する。 「冗談です」  私は即座に自分の言葉を取り消した。  美咲の笑顔を見た瞬間、部屋の体感温度が、2℃程下がった気がした……
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