二章・黒いヒト

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   毎日細心の注意を払って整えられる髪型。  ワックスにヘアムース、ヘアアイロンに寝癖直しのミスト。  彼女たちの鞄の中には気が遠くなる程の化粧品たち。 『毛先が思い通りにならないだけで一日が嫌になる』。  なんて話を、教室内で誰かがしていた気がする。  そんなことで嫌になる一日が可哀想だと思ったのをぼんやり覚えている。  幸い私の髪にはあまりクセというモノがなく、だからそれ程拘りもない。  最低限、ある程度の身嗜みとして整っていればいいのではないだろうか。 「……光はメイクとかしないの?」  それまで黙っていた美咲に、核心を突かれた。  よすぎるタイミングや、相手の心の機微に聡すぎると、却ってキモチがワルイ。  ましてやそれは、今日の帰りに私が考えていたことそのままじゃない。  
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