二章・黒いヒト

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   ぎくりとした。 「……しないよ」  だから反射的に否定してしまっていた。  帰りのバスの中では、確かにそういうコトを美咲に尋ねてみようと思っていたのに。  ―――先回りが上手すぎる相手には、逆に何も話せなくなるものだ。 「何もそこまでして見た目を飾ろうとは思わないもの」 「そうかな?例えば髪を上げてみるだけでもだいぶ変わるよ?急激な変化って程じゃないから、誰もいつも以上に深く突っ込んでもこないだろうし」  ね?と、美咲は微笑う。  ……何を言ってもやんわり受け流されてしまう寛容さ。  全てを受け入れてしまうような柔軟な心。  たったふたつの年の差なのに、絶対に適わないと嫌でも気付かされてしまう。  そんな、自分の姉。  だから私は美咲が大嫌いで―――大好きだ。  
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