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「ねぇ、光」
にんまり、という形容がぴったりの笑みで、ひとりが言い出した。
気安く呼ぶなと怒鳴りつけてやろうか?
……いや、やめておこう。面倒だ。
「容子って、ムカツクよねぇ」
たっぷりと含みを持たせた言い方で、彼女たちはそう切り出した。
あー……なんか、腹の内が読めてきた。
つまり今度は、私を筆頭にして水島をいたぶる気、か。
「……」
私は何も言わずに、彼女たちを掻き分けて席に着いた。
「ねぇ、光もそう思うでしょ?ムカツクよね、容子」
何としてでも私からの同意を得たいのか、彼女たちは執拗に聞いてくる。
……ひとつ、頷いた。
嬌声があがる。
「どうするー?とりあえず呼び出そうかぁ?」
クスクスと、八割方が嘲りで構成された笑声を漏らしながら、内緒話でもするように彼女たちは声を落とす。
「―――何か、勘違いしてない?」
私は、静かに響いた自分の声を驚く程他人事のように聞いた。
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