三章・昨日と今日

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  「ねぇ、光」  にんまり、という形容がぴったりの笑みで、ひとりが言い出した。  気安く呼ぶなと怒鳴りつけてやろうか?  ……いや、やめておこう。面倒だ。 「容子って、ムカツクよねぇ」  たっぷりと含みを持たせた言い方で、彼女たちはそう切り出した。  あー……なんか、腹の内が読めてきた。  つまり今度は、私を筆頭にして水島をいたぶる気、か。 「……」  私は何も言わずに、彼女たちを掻き分けて席に着いた。 「ねぇ、光もそう思うでしょ?ムカツクよね、容子」  何としてでも私からの同意を得たいのか、彼女たちは執拗に聞いてくる。  ……ひとつ、頷いた。  嬌声があがる。 「どうするー?とりあえず呼び出そうかぁ?」  クスクスと、八割方が嘲りで構成された笑声を漏らしながら、内緒話でもするように彼女たちは声を落とす。 「―――何か、勘違いしてない?」  私は、静かに響いた自分の声を驚く程他人事のように聞いた。  
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