三章・昨日と今日

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   優美と佳苗と(以下略)の笑い顔が、そのまま凍り付いた。 「確かに私は水島さんのしたことには腹を立ててるわよ? でもね。私は、あなたたちみたいな卑劣なやり方はもっと嫌いなの」  他人の前でこんなに口を利いたのはいつ以来だろう。  もうずっと、外で自分の考えを開帳するようなことはなかった気がする。 「単なる憂さ晴らしの理由付けに使われるのは真っ平御免よ。 勿論、あなたたちのクダラナイ結束の儀式に持ち出されるのもね。それに、水島さんを贖罪の山羊(スケープゴート)に仕立て上げるような真似もやめて。はっきり言って、見苦しいわ」  迷惑なの、と言い切った瞬間、タイミングよく始業のチャイムが鳴り響いた。  せかせかとした足取りで、何も知らない担任が教室内へ入ってくる。  舌打ちや呪いの言葉を吐き捨てて、私を取り囲んでいた集団が散っていった。  ―――視線が、背中に突き刺さっているのを感じる。  
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