三章・オカシナ関係

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  「はい、交代」  立場を交代して、立ち位置を替えながら―――ついに水島が、言った。 「なんで庇(カバ)ったの」 「……」  質問じゃなかった。  それは詰問だった。 「ねぇ。なんであたしを庇うような真似したの」 「何でって……別に」  ……本当の所、私は庇ったつもりはなかったりする。  ただ、もしもあの場面で水音さんを吊し上げるのに加担したら―――使い古した、ありがちな言い方だけど―――自分の品格まで落ちる気がしただけ。  更に、私の中では姑息な計算が働いていて、『事が露見した時に厄介な事になる=面倒臭い』という式が成り立っていたのだけのことなのだ。 「庇ったつもりは更々ないけど」  だから、正直に答えた。  ここで綺麗な理由を適当にでっちあげて、水島に恩を売っておくことも出来たけれど、それは私の美学(というか、我が家の美学?)に反する。  
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