三章・オカシナ関係

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  「一応、お礼言っとく。さんきゅ」    私に背中を押されながら、水島は言う。 「別に、」 「言うと思った」  礼を言われるようなことはしていない、と言い掛けたけれど、彼女はクスリと笑って、私にそれ以上言わせなかった。 「けどさ、あたしが助かったのは事実だから、聞くだけ聞いといてよ」  自己満だけどね、と水島は軽い口調で付け加えた。 「……」  なかなか、言うじゃない。  こういうのは嫌いじゃない。  自分の口元に、笑みが浮かんだのを自覚した。  もしかしたら水島は、私が思っていた以上に面白い人間だったのかも知れない。  
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