鬼の住処

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覗き込むような黒目がちの目が、茶色の目を捕らえる。 「何?」 まだ日差しは強くないというのに、どっと汗が吹き出そうな心地で剛太は聞き返した。 「この町には鬼が出る。」 「は?」 人魂や幽霊と呼ばれるモノは度々見たが、鬼なんて、いわゆる妖怪と呼ばれるモノにはお目にかかった事はなかったのだ。 豆鉄砲でも食らったかのような、間抜けな顔を見せる剛太に、魅夜は言葉を続けた。 「本当だよ。言ったでしょう? 見える人、久しぶりに見たって。前にいた人はね、喰われたの。鬼に。」 川から吹く涼しい風が、剛太にはひんやりと冷たく感じられた。 「でも、気を付けていれば大丈夫。幽霊なんかでも同じ場所にしか出なかったりするでしょう? 鬼もね、自分の住処(すみか)でしか人を襲ったり出来ないらしいよ。だから気を付けて。鬼は誘い込む罠を仕掛けるわ。」
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