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何の音かと思うが、確認している暇もなく、ただ魅夜の背を見て走り続ける。
「くるるるるるる。」
時折、存在を誇示するように、それの鳴き声が後ろから追ってくる。
(早くっ、早く終わってくれ!)
かしゃかしゃと走りにくい足音が鳴る。
木々の中、目の前に大きな黒い岩が現れた。
学校の二階くらいの高さはありそうなその岩。
「お疲れさま! これが御岩だよ!」
嬉しそうな声に、後ろを振り返ると、あんなにいた鬼たちの気配はなくなっていた。
「ぜぇ、ぜぇ……やっと、終わった?」
切れ切れの息で、御岩に手をつく魅夜を見る。
「そう。これで終わり。」
薄暗い森の中、場違いのように魅夜の明るい声が響く。
息切れ一つ無い魅夜の声。
膝に手を付き、息を調える剛太はふと先程から足元で鳴る音に目をやった。
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